飲食店のフランチャイズで正社員を雇うことはできる?
フランチャイズ店のオーナーはそのお店の経営主体であり、事業運営全般に対して責任を負います。飲食店であれば客に料理などを提供する部分はもちろんのこと、在庫管理や経理事務、人事などについても采配を振るいます。スタッフをどのような形態で雇い入れ、どれくらいの給与を支払うかは、原則としてオーナーに委ねられます。
スタッフの雇用主は運営本部ではない
フランチャイズビジネスにおいてよくある誤解の一つに、それぞれのお店で働いているスタッフはそのチェーンが直接雇っているスタッフであるとされるものがあります。しかし実態はそうではなく、スタッフの雇い主は個々の加盟店のオーナーです。
フランチャイズ方式では個々のお店が運営本部と加盟店契約を結ぶことで、運営上のノウハウを提供してもらったり、チェーン全体の商号を使うことができるようになったりしますが、経営そのものはそれぞれのお店ごとの独立採算制を採用しています。
したがって、たとえ同じ看板の下で営業している店が各地にあっても、一人のオーナーが複数のお店を出している場合を除いて、お店同士は資本関係がありません。また、本部と加盟店の間にも本社と支社といった関係はなく、あくまでもパートナーシップを結んでいる形になります。こうしたことから、フランチャイズ店で働くスタッフは、本部ではなく個々のオーナーとの間で雇用契約を結ぶことになります。
人事は原則としてオーナーに任される
それぞれのお店が独立しており、かつ人事管理もお店単位で行われることから、スタッフを何人雇いいくら給与を支払うかといった判断は、原則としてオーナーが自らの責任において行います。もちろんお店の忙しさにまったく見合わない人員配置を行ったり、経営状況を無視して多額の給与を支払ったりすれば、本部から改善指導を受けることもありますが、基本的にはオーナーの裁量に任されています。この裁量は、スタッフの雇用形態にも及びます。
正社員・契約社員・パート・アルバイトなど契約上の形態にはさまざまな種類がありますが、それを決めるのはオーナーです。飲食店のような事業形態では、スタッフの中でパートやアルバイトの占める割合が非常に高いのが特徴ですが、たとえばフルタイムで働きたいという希望を持っているスタッフがいた場合、それにふさわしい仕事ぶりが認められるのであれば、オーナーの判断で正社員に登用することができます。雇い入れの当初から、正社員として働いてもらうことも可能です。
スタッフの雇用形態を決める時はコストにも注意
スタッフを正社員として雇うかパート・アルバイトとして雇うかは、オーナーが仕事内容や人物評価などに基づいて自由に決められますが、その際に注意すべきことが一つあります。それは、雇用形態によってコストが変化することです。これは飲食店に限りませんが、正社員を雇う場合、給与は原則として月給制となります。
これは、勤務実績に応じて給与が支払われる時給制や日給制のスタッフとは異なり、休日に相当する分の給与も支払うこととなります。当然、その分の人件費が増加します。また、飲食店では専業主婦や学生などをパートやアルバイトで雇用することが多いため、週に1日しか勤務しない、あるいは1日2~3時間しか勤務しないケースはそれほど珍しくありません。
こうした短時間勤務の労働者は、健康保険や厚生年金といった社会保険の加入条件に合致しないため、お店側は加入手続きを行う必要がありません。しかしフルタイムの正社員となれば加入義務が生じるため、手続きが必要になります。加えて、月々の保険料にも事業主負担が生じます。
飲食店のように接客を伴う業態では、スタッフの質が経営を大きく左右します。優秀な人材は正社員に登用するなどすれば、モチベーションを上げて接客マナーをいっそう向上させるのにも役立ちます。ただし、コストに人件費の占める割合が非常に大きい業態でもあるため、経営状況をきちんと把握したうえで雇い入れの形態を決めることが大切です。