飲食店のフランチャイズは弟子やスタッフにお店を譲渡することは可能?
フランチャイズ方式による飲食ビジネスは非常に人気が高く、多くの人が独立開業の夢を叶えています。ただ、時には経営が順調でも事情があってお店を続けていくのが困難になることがあります。そうした場合、自分の下で働き続けてきた弟子やスタッフにお店を譲るのは可能かどうか、可能とすればどうすれば良いかをお話します。
独立自営店とは事業承継の条件が異なる
飲食店の経営はそれなりに体力も必要なため、加齢や健康上の問題などが発生した場合に継続が難しくなることがあります。しかし、経営状況自体は悪くなく、お店にも愛着があるというのであれば、誰かに後を継いでもらいたいと考えるのはごく自然なことです。
このような場合、通常は親族内承継と親族外承継という2つの手段のいずれかによってお店を引き継ぐこととなります。このうち親族内承継というのは、子どもや孫、あるいは配偶者などの身内に事業を譲り渡すことをいいます。
一方、親族外承継は親族以外の人間が事業譲渡の対象になります。一般的には、現店主の下で働いていた弟子やスタッフなどが候補者に選ばれます。長年一緒に働いていれば、人間性やお店を切り盛りする能力についてもよくわかっているので、安心して店舗を託すことができます。
しかし個人経営の飲食店であれば事業を誰に譲渡するかをオーナーの独断で決められますが、フランチャイズの場合はそうは行きません。というのも、フランチャイズは本部との契約があるため、自由に経営者を変更することができないからです。
フランチャイズ契約は一代限りが原則
飲食店におけるフランチャイズ契約は、契約中の現オーナーとの間で一代限り有効というのが一般的です。これは契約の一般原則に従っているばかりでなく、フランチャイズ特有の事情もあります。フランチャイズの場合、契約を結ぶことで加盟店は本部からさまざまな経営ノウハウの提供を受けます。その中には経営上の秘密に属するものも少なく、飲食店の場合は料理のレシピなどがこれに当たります。
そのため、万が一競合他社の関係者に事業を譲り渡されたりしたら大きな問題となってしまいます。こうしたことから、多くのフランチャイズチェーンでは現オーナーが他者へお店を譲渡することを禁止しているのです。
ただ、すべてのチェーンがそうだというわけではありません。もちろん無条件に禁止というところが少なくないのですが、中には原則禁止だが本部の承認があれば譲渡OKというところも存在します。その場合は、弟子やスタッフなどにお店を譲ることも可能になります。
本部のOKがあれば譲り渡せる場合もある
フランチャイズ店の事業譲渡については、本部が認めれば実現できるチャンスがあります。ただ、認められるかどうかの基準は個々のチェーンによって異なるため、ケースバイケースとなります。一般論として言えるのは、新規に加盟するオーナーと同程度の適性があるか否かです。
経営に対する意欲や責任感、マネジメント能力といった、店舗経営者に求められる資質を備えているかどうかがカギとなります。調理技術や接客ノウハウなどに関しては、すでにスタッフとしてのキャリアがあるのであればそれほど問題とされませんし、承継後は他のオーナーと同様のサポートが得られます。
なお、フランチャイズチェーンの中には「店舗引継ぎ制度」を設けているところがあります。これは、新規にオーナーとなろうとする者が、既存の加盟店から経営を引き継ぐことで開業を果たすというものです。こうした制度を採用しているチェーンならば、この枠組みを利用して弟子やスタッフにお店を譲り渡すことも可能です。
フランチャイズの飲食店は独立自営店とは経営形態が異なるため、自由に事業を譲り渡すことができません。しかし本部の承認があれば可能になることもあります。自らのリタイヤに際してお店を弟子やスタッフに譲りたい時は、契約書の内容をチェックしたうえで、可能となる余地があるのであれば本部に相談してみるようにします。